「ねぇ、イザーク」
それは、満月の日に電話を鳴らした彼の言葉。

電話

地球軍の一方的なプラント攻撃。
それにより、ザフトに属する軍人達は急に忙しくなった。
一隊の指揮官であるイザークは、隊の指示に加え議員としての仕事も有り
ほとんどの時間をディスクに向い過ごす毎日を送っていた。
時より思い出すのは、遠く離れた地球にいる恋人の事。
きっと誰よりも、先の事件で心を痛めているのだろう。

今すぐにでも、会いに行きたい気持ちを抑えてペンを走らせる。
自分にはやらねばならぬ事がある。
それを全て捨てて、あいつの所へ行っても喜んではくれない。


「イザーク、軍事回線からお前に通信」
急にディスプレイの映像が変わり、表示されたのは元同僚で今は部下のあいつだった。
「なんだ…この忙しい時に、今は忙しいからお前が代わりに…」
「藤の君からだ」
その名を聞いて、イザークは言葉を止めた。
『藤の君』それを示す人物を、自分は1人しか知っていない。
「繋いでくれ。」
「了解。」
ディアッカがそう答えて、画面が砂嵐へと変わる。

「ッ…い、………聞こえ、こ……ラ。イザーク聞こえますか?」
ノイズ混じりだった声が、やっとちゃんと聞こえて画面が表示される。
「聞こえている、キラ」
そこに映っていたのは、やはり藤の君。
イザークの遠い地球にいる恋人…キラ・ヤマトだった。
「電波悪いみたいだね…5回目でやっと繋がった」
「あぁ、先の防衛戦以来磁場が乱れているんだ」
数ヶ月前に会った時と、表面上は何も変わっていない気がした。
表面上は…だが、その虚ろだった瞳が今は。

「ねぇ…イザーク」
切り出した口調は、優しくて。
「なんだ。」
いつもと同じように、素っ気なさげに返したけれど。
帰ってきた答えはいつもと違った。
「もう一回剣を持つよ…僕。」
「キラっ…お前。」
積んであった書類が、立ち上がった瞬間に舞い上がって落ちた。

彼は画面の向こうで、いつの日かと同じように笑っていた。
辛さを全ての痛みを、堪えるように柔らかく…笑っていた。
「決めたんだな、キラは。」
分かってしまった、彼がもうそれを決めてしまった事。
そして、自分はそれを止める事は出来ないんだと。
「うん…ごめんね。」
「謝るな…」
「ありがとう。」
痛みを含んだキラの表情が、少しだけ和らぐ。
「死ぬなよ…キラ」
「イザークも無事で。」

辛そうなイザークの顔と雫を溜めたキラの瞳。
押さえきれない涙がキラの頬を流れてゆく。
道を歩き出した君と、自分が歩く道はいつか交わると信じている。
その時まで、自分には何も出来ないのならば…
ただ彼の無事を祈る事しか出来ない。

「もう…時間だから通信切るね。」
キラの後ろの方から、AAの艦長が彼を呼ぶ声が聞こえた。
「すぐ出るのか?」
「うん、その前にどうしてもイザークと話したかったから」
そう言った彼の瞳に、もう涙はなかった。
意志の強い、アメジストが自分を見つめている。
「そうか。」
「うん。」
旅立つ君に、気の聞いた言葉なんて出てこなくて。

「行ってこい…キラ」
無事の帰りを願い、ただ送り出す事しか出来なかった。
「うん、行ってきます。イザーク」
自分しか知らない、綺麗な微笑みを浮かべてキラは笑う。
そしてパチンという音と共に、通信は切れた。
ディスプレイに表示されたのは、先ほどまで作っていた報告書。
ため息を一つ吐いて、イザークはまたキーボードを叩き始める。
「俺は、俺のやるべき事を。」
胸元で揺れる、彼の瞳の色をした宝石を持つ指輪。

君に会えない寂しさも、心の葛藤も全て乗り越えて
もう一度君に逢える事を信じて。
自分のやるべき事を、ただ真っすぐに。




イザキラは、イザークがかっこいいのが好きです。
離れていても、心は通じ合っているな2人…
アスキラとは違う美味しさが有りますね(笑)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送