降り注ぐ、甘さ。


日も陰り、少しだけ涼しさが肌を撫でる昼下がりの敦盛の部屋。
いつものように遅起きをした知盛と、書物を紐解く敦盛がいた。
「敦盛、」
縁側の方大きな柱に寄りかかっていた彼が、敦盛の名を呼ぶ。

「なんですか、知盛殿?」
さらりと衣が動く音がして、視線を向ければ彼が手を招いていた。
読みかけの書物を、そっと台に伏せるとしずしずとその手に従った。
あと数歩で、彼の元へたどり着くかと思ったとき
「ひゃぁっ」
急に腕を引かれて、気づけば彼の腕の中にすっぽりと納まっていた。

自分より引き締まった身体に触れた肌が熱くなる。
ドキドキとして、顔を上げられずに腕の中で
知盛殿、と名を呼ぶことしか敦盛にはできなかった。
くっ、と彼が喉で笑う声が聞こえたけれど、ただ顔を俯いたまま。

「どうした、敦盛?」
しばらくして、楽しそうな声で知盛が敦盛を呼んだ。
「っ、知盛殿!何をいきなりなさるのですか。」
やっと落ち着いた心で、そう伏せていた顔を上げて言えば
不敵な笑みを浮かべたまま、先ほど抱きしめた所為で
乱れた髪を するりと掴んで、薄い唇で口づけ落とす。
その綺麗な一連の行動に、眼を奪われてた敦盛に言った。

「今日はお前の誕生日、とやらなんだろう?」
「えっ、」
敦盛の中で、誕生日という言葉が朧げに思い出される。
確か、大切な人の生まれた日を祝うという将臣殿の世界の風習…のはず。
大切な人?


「っ、知盛殿」
「何だ?」
今度は耳まで真っ赤にした恋人に、知盛はくっとまた笑う。
「あの、私の誕生日を祝ってくださるのですか?」
その姿が本当に可愛くて、珍しく他意も無く笑う。
するりと楽を奏でる細い指を掴むと、やんわりと薬指に口づけを落とす。
「あぁ、お前の誕生日だから祝うんだ。」
「知盛ど、の…」
「分かるな、敦盛?」
自分だから祝う、と言った年の離れた恋人の言葉。
夢では無いかと、大切な人の名を呼べば
返事の変わりに、顎にかけられた長い指で上を向かされて
「誕生日、おめでとうだ。」
感謝の言葉を言う暇も無く、重なった唇。


愛している、とかそんな言葉よりももっともっと甘いそれが
私にとっての、一番のバースデープレゼント。


とっても短いですが、愛は詰まってます。
知敦は、向き合ってぎゅっと抱きしめるのがいいと思う。
ついでに言うなら、膝の上にのっかてると可愛いよ。

敦盛さん、お誕生日おめでとう。


>何もいらない、貴方さえいれば。
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