優しい誓い



深い、深い眠りの海から浮上して
ゆるりと開けた眼に、飛び込んできたのは
自分とよく似た容姿の人。
銀糸が空に掛かった三月に、反射し光る。
己が付けた紅い華が、雪のような肌に咲いているのが見えた。


横顔は、遠い何所かを見ていた。
その退廃的な雰囲気を、自分はとても愛おしいと思う。
来るべき未来を、滅びを見たと。
受け入れて、それを楽しむ様子は他者が見れば
狂っていると思えるのだろう。
けれど、私はそれを美しいと思うのだ。


きっと貴方を愛しすぎて、貴方しかいらなくて。
だから一門の未来も、己の末路も
気にならないのだろう。

貴方と有る時間だけが、私の生。

「兄上。」 
そっと愛しい人の名を呼べば
「どうかしたか?」
夜の空気に、思いの外響いて
驚きの表情で、知盛は重衡へと視線を向けた。
 
「私は決めました。」
するりと彼の元へと体を寄せると、言う。
「兄上が一門の破滅を見届ける使命を背負うならば」
まだ冷め切らぬ熱を持つその肌に、指を滑らせて
「私は運命が私と兄上を別つ時まで共にあります。」
ふっ、と彼独特の喉を鳴らした笑いが聞こえて
兄上?と視線を上げれば彼は笑っていた。


戦場にいる時のような、強い強い赤を秘めた瞳。
飢えた獣のよう。
「強くなれ、重衝。」
そのまま、彼の首筋に噛み付くような口付けを送る。
ちくりと感じた痛み。
傷口を這う、舌の感触が再び熱をあげさせる。
「俺の隣で戦乱を駆け抜けるのだろう?」
顔を上げて、付いた血を舌でなめ採る姿は妖艶で。

「はい。」
肯の返事を唱えると共に、その体に覆いかぶさる。
楽しそうな紫が、自分を見ている。


俺の右腕と呼ばれるまで登りつめてみせろよ。


彼は組み敷かれても、その気高い獣の性を失わない。

そんな愛する人に私は誓おうと思う。

兄上、と愛撫の間に名を呼べば
辛そうに眉を寄せつつも、彼は応えてくれた。
「私は誓います。死が二人を分かつ時まで、
 辛い時も嬉しい時も貴方の側におりましょう。
 その為に、全てを捨てる事になろうとも。」
今夜最後になりそうな、優しい口付けを体に刻んでいく。
それは私から貴方に残す、契約の証。

あぁ・・・

高揚の色を浮かべた返事が、その契約の成就を知らせた。

 



重衡×知盛は愛とかそういうレベルじゃないと思う。
なんかもっと汚くて、高貴なもの?(日本語変だ)
決して、ひとつに成れぬことを知っているからこそ
互いを求めてしまうのではないでしょうか?

>綺麗な契約を
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