立つ人の背


知らなければ、幸せだった。
そんな真実なんて、知りたくなかった。

「先輩?」

ゆっくりと、彼女は振り向いた。
ずっと泣いていただろう。
兎のように真っ赤な瞳でどうしたの、と返した。

『俺が、還内府だ』

還内府という名。
それを意味するのは、自分達の敵だということ。
敵以外の何ものでもなく。
どうしてなんだ、と。
行き場のない怒り。

「なんで、なんであの人は。」

先輩は、泣いているのに。
悲しくて辛くて、我慢しているのに。

有川将臣を思って泣いているのに。

ゆずるくん、と自分を呼ぶ声。
何もできない、この涙を止められない。

自分は、彼女が好きで。
彼女は、兄が好きで。

兄も彼女が、大切で。

なのに悲しませて、泣かせて。
自分がどんなに望んでも、手に入れられぬモノを
その手に掴めるのに。
どうして、掴まない………

彼女より、大切なモノが他にある?

そっと頬に触れた、温もり。
幼い頃から変わらない、その暖かさ。

名は体を表すと、言う。
彼女の名は、春日望美。
春の日の様に暖かくて。
望月の様に、暗い路を照らす光。

「ね、泣かないで。」

「せんぱ………」

見上げた彼女は、笑っていた。

「将臣君にも、守りたいものがあるんだよ。」

顔を歪めて、唇を食いしばって。
悲しく笑って、



わたしは、大丈夫だから。



彼女は、立っていた。






将望ルートで、望←譲な感じです。
望美は絶対に、真実を知ってもみんなの前じゃ 泣かないと思います。
それが彼女の強さであり、弱さだなんじゃないかと。



>そう言っていつだって君は悲しい笑顔を見せる(comodo)
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